べっ甲業界の現況

原料と産地

べっ甲製品は、タイマイ(玳瑁・亀の一種)の甲羅を原料としています。
タイマイの主な生息地はドミニカ、キューバ、インドネシアの熱帯・亜熱帯地方です。日本でも小笠原付近でわずかにタイマイの生存を確認しています。

原料の取引

べっ甲の取引は、長崎・大阪・東京のべっ甲協同組合を通して、従来からの製造業者による手持ちの原料だけで行われています。
原料のタイマイが今や貴重な資源となった理由は、1991年にワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動物保護を目的として国際取引を制限する条約)で国際取引が禁止され、その2年後に日本でも、タイマイの輸入が全面禁止されたためです。
なお、当社は、べっ甲協同組合大阪甲和会に加入しており、日本国に残存するタイマイ甲羅原料のうち当組合において取引した原料のみを使用し、べっ甲商品を製造販売しています。

べっ甲の歴史

日本のべっ甲業界は三百年の伝統を誇っています。その根拠は、正倉院にある琵琶や杖にタイマイの甲羅細工が見つかったことで、現在、べっ甲工芸品の始まりは奈良時代以前との説が有力です。
べっ甲細工が広く一般に広まったのは、江戸時代に入ってからです。オランダ人が長崎の出島にべっ甲を持ち込み、張り合わせの技術を伝え、その後、大阪の商人が江戸で売り出し始め、べっ甲の櫛やかんざしなど、高価な装飾品として知れわたりました。

べっ甲の価値

甲羅は、色が斑(まだら)で、一枚ごとに剥がれやすくなっていて、べっ甲の白と黄色の斑部分を職人は布(ふ)と呼び、中でも黄や赤の色が多い布は希少価値があり、取引値も高くなっています。

加工の技術

加工技術の基本は、甲羅原料を張り合わせ、厚みを増し、強い材料を作ることです。原料は薄い板状で厚みは約1mm~3mm。そのままでは薄すぎて細工できないので、熟練の職人が数枚を、水と熱により巧みに張り合わせ、櫛、かんざし、置物などに仕上げていきます。さらに、色の違う数種類の甲を張り合わせる「継分」(つぎわけ)や、「水もく」と呼ばれる模様を生かした技は、当社が得意とする高度な加工技術です。

業界の現状

伝統工芸品としてべっ甲特有のあめ色の輝きを生かしながら、金、宝石、カメオ、珊瑚など他素材との組み合わせ商品の開発が主流です。
べっ甲職人については、伝統工芸保存事業の一環としてべっ甲細工技能士の資格制度がありますが、老齢の方が多い中熟練の手は次第に減っています。
原料の調達については、農林省主導で日本べっ甲協会がキューバでタイマイ養殖放流事業を行っていて、さらに、ワシントン条約締約国会議のダウンリスト実現に向けカリブ海域でのタイマイ資源調査も実施しています。
ちなみに、長崎市は歴史的にもべっ甲工芸の本場で細工職人も多く、貴重なべっ甲作品の展示施設もあります。なお、当社工場は長崎県諌早市です。

べっ甲の色合いから、黒の部分を黒甲、亜麻色の透明度の高い部分を白甲、茶色や飴色のものを飴甲、亜麻色の中に黒、茶色の斑の入ったものをばら斑甲と呼ぶ。白甲は腹の甲からとれ髪飾りに好まれ(髪の色にうつりがよいから)、欧米では特に人気がある。黒甲は蒔絵(まきえ)を施したり、螺鈿(らでん)、真珠を埋めたりして用いられることが多い。日本では、ばら斑甲(単に茨布と呼ぶ)が好まれている。